コバの話

コバってなんだ???


って人のために簡単に説明すると、革の切り端、断面、端部分ですね。


この仕事をしてると当たり前のように使ってるこの言葉。


漢字で書くと【木端】だったかな?


靴業界では土踏まずより前方部分のアッパーからはみ出したソールの端面らしいです。


なんで前方部分だけなんだろ?


ま、そんなことはいいんですが(笑)




このコバって部分。

すごく大事なんです。実は。


ここの仕上げを見ると職人の腕がわかるってくらい。


というのも、財布でもバッグでもキーホルダーでも、なんでもそうですが、使ってて傷んでくるのはほぼ端っこですよね?

何かにぶつけたとか、落としたとかじゃない限りは、ほとんど端っこがヤれてきます。


なので、コバの処理一つでその製品の耐久性に大きく影響してくるんですね。


あとは美しさ。


内縫い(裏っかえしで縫製して最後にひっくり返して仕上げる縫い方)の場合はコバが見えないのでこの限りではないですが、コバが見える製品では、コバ処理をせず、切りっぱなしでケバケバのワイルドな感じなモノもありますが、やっぱりしっかりと磨かれて滑らかなコバが高級感ありますよね?


で、一概にコバ処理といっても大きく3つの方法に分かれます。


・コバ塗り

・ヘリ返し

・コバ磨き


コバ塗りは、樹脂成分を多く含んだ処理剤をコバに縫って、革断面をコーティングする方法です。

メリットは、時間がかからない。クオリティが革の質にあまり左右されない。

デメリットは、安っぽく見える。革の質感が消える。


ヘリ返しは、表部分の革の端っこの厚みを薄くして(漉くといいます)断面そのものを表の革で包んでしまう処理方法です。

布の断面の処理なんかはほとんどこの方法だと思います。

メリットは、革の断面が見えないので統一感が出る。クローム鞣しの革のようにコバ磨きがしにくい場合でもコバをきれいに見せられる。

デメリットは、表側はきれいだが、裏側に巻き込んでる革が見えるのであまり美しくない。


最後にコバ磨きというのは、その名の通り、とにかく磨いてピカピカにする処理方法。

メリットは、美しいこと(主観ですが)。革断面の質感を生かせること。補修が容易なこと。

デメリットは、とにかく時間がかかる。効率が悪い。

ちなみに私が作る製品のほとんどは、コバ磨きで処理しています。


この処理方法は一概に磨くといっても、正解がないんです。

というのは、職人さんによってやり方が千差万別、色々ありすぎなんです。

かくいう自分自身も、10年前のやり方、5年前のやり方、去年のやり方、現在のやり方、全部違います(笑)

毎日が研究と実験、そして進化です。

やり方がたくさんあるというのはどういうことかというと、コバ塗りは、コバ処理剤を塗り固めたら完成。ヘリ返しは端っこを折り返して縫ったら完成。


コバ磨きは、、、


磨き剤では、水、ふのり、トコノール等。

道具は、ヤスリ、木、プラスチック、骨、ヘチマ、Tシャツ、幌布、パンスト等。


使うものだけでもこんだけあるんです。

これに、使う順番や方法を加えていくと、、、


ちなみに私は、


あ、こっからは先ほども書いたように、私のやり方です。これが正解ではないです。

1:まず、サンドスティックと呼ばれるアイスの棒にやすりがついたようなやつの粗い面でコバを削って、平らにします。

2:次に、断面の角部分をヘリ落としという道具を使って面取りします。

3:面取りした部分をサンドスティックの細かい面で慣らしていきます。

4:#600のサンドペーパーでコバ全体の形を整えていきます。

5:#1000のサンドペーパーでコバをきれいに磨いていきます。

6:染色します。

7:染色したときの水分が残ってるうちに、ウッドスリッカーと呼ばれる木の棒などで磨きます。

8:乾いたら、もう一度#1000のサンドペーパーで磨きます。

9:#1500のサンドペーパーで磨きます。

10:#2000のサンドペーパーで磨きます。

11:磨いて色が薄くなった部分を染色しなおします。

12:乾燥したら、トコノールというコバ剤を塗って、柔らかい布で磨きます。

13:固形ワックスでこすって擦りこみます。

14:鉄の焼きゴテでワックスを溶かしながら、しみこませると同時に、革自体を焼き締めます。

15:固形ワックスをもう一度擦りこみます。

16:最後に柔らかい布で、やさしくワックスを慣らす様に磨きます。

書いてて改めてびっくりしました…

16工程もあったんだ(笑)

めちゃめちゃ効率悪いです。

商売を考えたら、ナンセンスなやり方に思えてきます(笑)


以前、ある革モノ屋の先輩がこんなこと言ってました。


「いくらきれいに美しく仕上げても、買いに来るお客さんはほとんど素人で、そんなとこ見てない。素人に分からないとこ(コバに限らず)にこだわるくらいなら、もっと早くたくさん作って、ちょっとでも安く販売してあげた方がいい!」


もちろん、それも正解だし、正論です。


でも、


でも、私は、


ピカピカに光った銃で…


ではなく(笑)


ピカピカに光ったコバを見ると、満足感と反省を同時に感じ、次はもっときれいにしよう!と、前向きな探究心がフツフツと湧いてくるんです♪

メイドインジャパンのハンドメイドって”そこのこだわり”も魅力の一つだと思ってます。


建築の専門学校に通っていた頃、日本家屋の大工さんの勉強をしていました。

もちろん木造の古くからある日本家屋。

見た目も、内装も地味だけど細部に至るまでめちゃめちゃこだわって作られてる。

柱と梁のつなぎ目部分なんて、紙一枚も入らないほどぴっちり♪

だからこそ、日本の木造建築は世界一だと言われてるんです。

そんな日本家屋の職人さん。

なんと、普通の地味なお家の床下に遊びで彫刻を彫ったりしてるんです(笑)

お客様の目には一生触れない部分ですよ?

なんか粋ですよね♪

そんなメイドインジャパンのワビサビってなんか好きです。


私も真似して、ランダムに革の床面にメッセージを入れたりしてます。実は♪

あ、完全にバラバラにしないと見えない部分ですので、探してみても無理です(笑)



ちょこっと話がそれたかもしれませんが、とにかく、お客様に、もっといいものを!もっと美しいものを!もっと愛着を持ってもらうものを!

この気持ちが、自分の中ではすごく大切だと思ってます。

なので、多少値段が高くなっても、今後もこの方法は続けていきますし、もちろん時間短縮を考えながら、さらに美しく仕上げられるよう研究していきますヽ(^o^)丿


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《人生のパートナーとなる「愛着」の持てるモノを作りたい。》過去のものは捨て、次々に新しいものを取り入れる。前へ前へ。もちろん、それは素晴らしいことだと思います。しかし、ふと立ち止まってよく考えてみてください。長く使ったモノには「愛着」が沸きます。使い手それぞれの味も出てきます。モノにも魂は宿ります。使い続けたあなたにしか感じられない魂が。そんな、魂を宿せるような愛せるモノ。そしてモノに愛される使い手に。《ハンドメイド》当工房の製品は原則、オールハンドメイドです。型紙作りから、染色、裁断、縫製、仕上げ。手間と時間はかかりますが、より堅牢に、より永く使っていただけるよう一工程一工程手作業で仕上げております。ただ、私の作業はモノの形を作り上げるところまでです。続きはあなたが使うことによって、完成に近づいていきます。あなたが使うのを止めたとき。色が変わり、傷が付き、汚れが付き、「お疲れ様」とあなたが伝えた時こそ本当の完成だと思います。使い手によって、どんな完成品になるのかは分かりません。私が途中まで作り上げたモノ。その完成品を見るものこの仕事の楽しみの一つです。もちろん、私が作らせていただいたモノはアフターフォローもいたします。補修、修理、リメイク、新たな魂を吹き込みますので、末永くお使いください。

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